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東京地方裁判所 昭和52年(特わ)3463号 判決 1978年4月21日

本籍

富山県滑川市荒町一五九五番地

住居

東京都清瀬市元町一丁目一九番五号

歯科医師

小幡哲夫

昭和一一年四月二〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官河内悠紀出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金三、五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から四年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都清瀬市松山一丁目一三番二五号モリオビルにおいて「小幡歯科医院」、埼玉県狭山市祇園町四番地高鳥ビルにおいて「狭山台歯科医院」の名称で歯科医業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、診療収入の一部を除外して仮名預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和四九年分の実際総所得金額が三、九二三万四、六〇五円あつた(別紙(一)の修正貸借対照表参照)にもかかわらず、昭和五〇年三月一四日、東京都東村山市本町一丁目二〇番二二号所在の所轄東村山税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が三四九万六、七七〇円の欠損でこれに対する所得税額はすでに源泉徴収された所得税額を控除すると九二万九、三五五円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書(昭和五三年押第三〇五号の符号一)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額一、六九六万九、五〇〇円(税額の算定は別紙(四)の一計算書参照)と右申告税額との差額一、七八九万八、八〇〇円を免れ、

第二  昭和五〇年分の実際総所得金額が七、一〇五万六、二一八円あつた(別紙(二)の修正貸借対照表参照)にもかかわらず、昭和五一年三月一三日、前記東村山税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が八三一万〇、二〇八円の欠損でこれに対する所得税額はすでに源泉徴収された所得税額を控除すると一七六万二、一六〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書(前同号の符号二)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額三、六二八万六、四〇〇円(税額の算定は別紙(四)の二計算書参照)と右申告税額との差額三、八〇四万八、五〇〇円を免れ、

第三  昭和五一年分の実際総所得金額が一億〇、四九八万七、四四九円あつた(別紙(三)の修正貸借対照表参照)にもかかわらず、昭和五二年三月一四日、前記東村山税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が七〇万三、一〇八円でこれに対する所得税額はすでに源泉徴収された所得税額を控除すると二四九万九、三五〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書(前同号の符号三)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額六、〇〇一万八、八〇〇円(税額の算定は別紙(四)の三計算書参照)と右申告税額との差額六、二五一万八、一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

第一  判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、

一  被告人の当公判廷における供述並びに大蔵事務官に対する質問てん末書(一二通)及び検察官に対する供述調書(乙1ないし13)

一  小幡靖子(二通)、工藤實(二通)、森田泰司、保坂菊江の大蔵事務官に対する各質問てん末書(甲一25ないし30)

第二  別紙(一)ないし(三)の各修正貸借対照表掲記の各勘定科目別「過年度金額」、「当期増減金額」欄記載の数額のうち、

(イ)  昭和五一年分につき、

一 後記「公表金額」欄掲記の各証拠

(ロ)  <1>現金につき、

一 大蔵事務官作成の現金残高調査書(甲一1)

(ハ)  <2>当座預金、<3>普通預金、<4>通知預金(昭和四九、五〇年分のみ)、<5>定期預金、<6>別段預金(昭和五一年分のみ)、<7>定期積金につき、

一 大蔵事務官作成の預金等調査書(甲一2)

一 浦一生、三木豊、三沢清、山本清の大蔵事務官に対する各質問てん末書(甲一31ないし34)

(ニ)  <8>未収入金、<12>仮払税金につき、

一 大蔵事務官作成の未収入金、仮払税金調査書(甲一3)

(ホ)  <9>材料棚卸高につき、

一 大蔵事務官作成の材料たな卸高調査書(甲一4)

(ヘ)  <10>ゴルフ会員権につき、

一 大蔵事務官作成のゴルフ会員権調査書(甲一5)

(ト)  <11>出資金につき、

一 大蔵事務官作成の出資金調査書(甲一6)

(チ)  <13>前渡金(昭和四九年分のみ)につき、

一 大蔵事務官作成の前渡金調査書(甲一7)

(リ)  <14>電話加入権につき、

一 大蔵事務官作成の電話加入権調査書(甲一8)

(ヌ)  <15>権利金、<16>賃借敷金(昭和五〇、五一年分のみ)につき、

一 大蔵事務官作成の権利金償却費調査書(甲一9)

(ル)  <17>土地につき、

一 大蔵事務官作成の土地調査書(甲一10)

(ヲ)  <18>建物、<19>建物付属設備、<20>工具器具備品、<21>車両運搬具につき、

一 大蔵事務官作成の減価償却明細書の調査書(甲一11)

(ワ)  <22>過払源泉税につき、

一 大蔵事務官作成の過払源泉税調査書(甲一12)

一 東村山税務署長作成の証明書(甲一35)

(カ)  <23>事業主勘定につき、

一 大蔵事務官作成の事業主勘定調査書(甲一13)

(ヨ)  <24>非事業用貸付金につき、

一 大蔵事務官作成の非事業用貸付金調査書(甲一14)

(タ)  <25>非事業用有価証券につき、

一 大蔵事務官作成の非事業用有価証券調査書(甲一15)

(レ)  <26>非事業用建物につき、

一 大蔵事務官作成の非事業用建物調査書(甲一16)

(ソ)  <27>非事業用預け金(昭和五一年分のみ)につき、

一 東光証券株式会社受渡部長作成の証明書(甲一24)

(ツ)  <28>借入金につき、

一 大蔵事務官作成の借入金調査書(甲一17)

(ネ)  <29>未払金につき、

一 大蔵事務官作成の未払金調査書(甲一18)

(ナ)  <30>預り金につき、

一 大蔵事務官作成の預り金調査書(甲一19)

(ラ)  <31>非事業用未払金につき、

一 大蔵事務官作成の非事業用未払金調査書(甲一20)

(ム)  <33>利子所得申告不要分及び利子所得につき、

一 前掲甲一2

(ウ)  <34>給与所得控除及び給与所得につき、

一 大蔵事務官作成の給与所得及び給与所得控除調査書(甲一21)

(ヰ)  <35>配当所得申告不要分につき、

一 大蔵事務官作成の配当所得申告不要分調査書(甲一22)

(ノ)  <36>非課税割増金及び雑所得につき、

一 大蔵事務官作成の雑所得及び非課税割増金調査書(甲一23)

(オ)  <38>事業専従者控除につき、

一 前掲甲一25

(ク)  <40>青色申告控除額(昭和五一年分のみ)につき、

一 前掲甲一35

第三  別紙(一)ないし(三)の各修正貸借対照表掲記の各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び虚偽申告の事実につき、

一  押収にかかる昭和四九年ないし同五一年分の各所得税確定申告書(各一綴)及び各所得税青色申告決算書(各一綴)(昭和五三年押第三〇五号の符号一ないし六)

一  検察事務官作成の報告書

(法令の適用)

法律に照すと、被告人の判示各所為はいずれも所得税法第二三八条第一項に該当するところ、情状により各罪につき同条第二項を適用してその罰金額は五〇〇万円をこえその免れた所得税の額以下とすることとし、所定刑中いずれも併科刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内、罰金刑については同法第四八条第二項により各罪につき定めた罰金の合算額以下において処断することとし、被告人を懲役一年六月及び罰金三、五〇〇万円に処し、同法第一八条により右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、諸般の事情を斟酌して同法第二五条第一項を適用し、この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 半谷恭一)

別紙(一)

修正貸借対照表

小幡哲夫

昭和49年12月31日

<省略>

<省略>

別紙(二)

修正貸借対照表

小幡哲夫

昭和50年12月31日

<省略>

<省略>

別紙(三)

修正貸借対照表

小幡哲夫

昭和51年12月31日

<省略>

<省略>

別紙(四)の一

ほ脱税額計算書

小幡哲夫

自 昭和49年1月1日

至 昭和49年12月31日

<省略>

別紙(四)の二

ほ脱税額計算書

小幡哲夫

自 昭和50年1月1日

至 昭和50年12月31日

<省略>

別紙(四)の三

ほ脱税額計算書

小幡哲夫

自 昭和51年1月1日

至 昭和51年12月31日

<省略>

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